フープフラフープ

はらの趣味です

日々のソナチネ

日曜の夜に終電に乗り込む人がこんなにいるんだ、と思った。乗り換えの時間が20分くらいあるので、ホームのベンチに座った。ホームにいる30人くらいの人たちみんながひとりで、そのほとんどがスマホをいじっている。わたしの膝にはASIAN KUNG-FU GENERATIONの黒いツアーTシャツがのっかっている。わたしのiPhone、「ASIAN KUNG-FU GENERATION」て変換してくれないからGoogleからコピペしてきた。これを機にiPhoneに学習してほしい。

 

高校時代はCDをたくさん買うお金がなかったのでTSUTAYAのレンタルが音楽の生命線だった。アジカンは同級生のガールズバンドが毎回ライブでやっていたので、TSUTAYAにある旧作は全部ウォークマンに入れて、「君繋ファイブエム」とか「ソルファ」とかをよく聴いていた。でも既にリリースされていたはずの「サーフ ブンガク カマクラ」はそこにはなくて、わたしは江ノ島エスカーを知らないまま大人になった。

高校卒業して、大学生になって、社会人になってしばらくしてできた友達が、エスカーにのりながら音楽を流している動画をTwitterにアップした。サーフ ブンガク カマクラを聴きながら江ノ島で遊んだ、とあったから、Apple Musicでアルバムを探して聴いてみた。「藤沢ルーザー」が流れてすぐに耳が離せなくなって、聴いたことのない曲ばっかりだったのになんだか懐かしかった。それからしばらくして、アルバムの完全版が出て、ツアーが始まった。エスカーの動画を撮影した友達が、ZEPP羽田のライブに誘ってくれた。

このアルバムとわたしの歴史は浅いけど、一曲一曲それぞれに好きなところがあるし、思い出す記憶や感覚もたくさんある。「江ノ島エスカー」が代表曲だと勝手に思ってるんだけど、この曲でいえば最後のサビに行く手前の転調までの流れがめちゃくちゃ好きだし、Twitterの動画と昔家族で乗ったはずの長い長いエスカーのことを思い出す。

 

ライブのセトリの話をします。

 

ライブ中、アルバム曲ももちろんすごくよくて楽しかったけど、それ以外にわたしが高校・大学時代に何度も聴いた曲をたくさんやってくれた。「ループ&ループ」と「アンダースタンド」は同級生バンドが毎回やる曲で、北浦和KYARAの下手側の柵にもたれかかって見上げるボーカルの表情を今でも鮮明に思い出すことができる。特にアンダースタンドは大好きで、大学の時も繰り返し聴いてヒトカラで毎回歌っていた。その後のアンコールで「その訳を」「遥か彼方」「羅針盤」が連続で演奏されて泣きそうになる。羅針盤、生で聴ける日が来るなんて思わなかった。初めて聴いた時、「こんな短い曲ってあっていいの!?」って思った気がする。2年前のフェスで「アジカン何やると思いますか?」「羅針盤やってほしいなぁ」「絶対やらないでしょ」って話した伏線を回収できた。

 

結局、わたしがいつも追い求めてしまうのは未来じゃなくて過去なのだ。なにかを思い出したくて映画を観るし、ライブに行くし、本を読む。思い出してはうまれる寂しさを抱きしめて、その懐かしさに守られている。全く新しいなにかだって、思い出す過去を作るための行為のように感じることがある。きっと明日からのわたしは、羅針盤を聴くたびに今夜のライブを思い出すようになる。それって後ろ向きなことに見えるかもしれないけど、わたしにとってはすごく幸せなことだ。思い出したい過去をたくさん作って、それを支えにして生きていく。そうしたら、真っ暗な未来が少しだけ明るく見えるようになって、少しだけ歩きやすくなる、気がする。

 

ライブで、前の人の輪郭が光に縁取られる景色が好きだ。演者が人影に隠れて見えなくても、その光景と体に響く音が心地よくて楽しい。今日のライブで、何度も「また誰かとバンド演奏がしたい」と強く思った。だけど、他者の介在する趣味の難易度は年を取るごとに段違いに上がっていく。ひとりでやる趣味ですら、仕事の合間にいっぱいいっぱいでやっていて、時間が全然足りない。ライブ中ずっと腰が痛くて、体の衰えが怖くてたまらなくなった。少しでも若いうちに、体が動くうちに、できることをやっておきたい。今年のクリスマスプレゼントは体力と背筋が欲しい。お願いしますって。