フープフラフープ

はらの趣味です

もう1杯のみたいなぁ

 

友達と普段使わない駅で待ち合わせをすることになって、20分くらい時間があったから本屋に寄った。駅ビルの小規模な本屋で、大塚愛の「フレンジャー」のカバーが流れていて懐かしいかんじの雰囲気だった。レジでは若い男女の店員さんが楽しそうに談笑していた。

近づいて、本を選ぶふりをしながら聞き耳を立てた。内容まで聞くつもりはないから、音だけ脳内に通過させて川の音とか雨の音みたいなBGMとして談笑を聴いていた。ちょっとしてからレジを離れた。なんかすごくいいなと思った。

小説というか文庫本の棚は2つしかなくて、でもそれが逆に良かった。作者50音順にはなっているけど、1作者あたり多くても3作品とかだったので、適当に目を滑らせるだけでいろいろな本が目に入る。最近映画館で見たようなタイトルから全然知らないものまでいろいろあった。「あつあつを召し上がれ」というタイトルを見つけて、最近読んだ「おいしいごはんが食べられますように」のことを思い出して、そのまま手に取ってレジに向かった。店員さんたちは変わらず談笑していて、わたしが声をかけた瞬間に「いらっしゃいませ〜」と二人揃って店員モードに切り替わってなんだかおかしかった。

 

4ヶ月ぶりに会う友達と、たくさん話して、たくさん幸せな話が聞けて、わたしの腹の立った話も聞いてもらった。本当に嫌だと思っていることを、それも特定の誰かに対する嫌悪感を、ちゃんと人に聞いてもらったのは久しぶりだった。

前にも書いたけど、傷つけられることを正当化する必要なんてないと思う。でも、正当化せざるを得ない時がある。普段はよくしてくれる人や仲が良いはずの友達に傷つけられたときとか、相手に悪意がないときとか、相手が「良い人」とされている人だった時とか。わたしが間違っているだけなのだ、わたしが狭量なのが悪いのだと思い込んでしまうこともあるし、どうせ誰かに言ってもわたしが悪者になるだけだろうなって思うこともある。そういうふうになると、どこにも出せなかった不満が凝縮されて、いつの間にかその相手を大嫌いになっていることがある。

 

今日は木曜日で仕事がゆるい日だったから、合間の暇な時間で「水は海に向かって流れる」を電子書籍で買って全部読んだ。ダウ90000の900000000で蓮見さんと上原さんが薦めてたやつ。正直好きかと言われるといろんなノイズが邪魔をしてきて素直に大好きとは言えないけれど、例えば「怒ること」「許すこと」についてとか、大切だと思った人を大切にする方法だとか、刺さったところがたくさんあった。わたしはまだまだ視野が狭いなと思うし、こうやって視野が少し広がる瞬間がとても楽しい。

 

それもあって、勇気を出して「すごく嫌だったけど誰にも言えなくて我慢したこと」「許したくないのに謝られたから許さざるを得なくなったこと」の話をした。そうしたら「それは怒って当然だよ」「許したくないよ」と一緒に怒ってくれた。怒って良いんだって思えるだけでこんなに心が軽くなるとは思ってなかった。「ちゃんと話を聞いた上で味方でいてくれたこと」がなにより一番嬉しかった。

全員がわたしを好きになるわけじゃないのと同じように、わたしだって全員を好きでいる必要ないよな、と思った。嫌いという感情は、もちろん表に出すのはだめだけど、だからといって否定されなきゃいけないものでもないんだね。自分の「嫌い」を認めたら、すごく楽になった。

 

 

脈絡もなく突然「今日は誕生祝いだから、サプライズのケーキがあるからね」と早口で言ってきて、そういう不器用なのに不器用全開で優しくしてくれるところが好きだと思った。本当は居酒屋とかで電気が消えてハッピーバースデーが流れながらケーキが来るアレは苦手なのだけど、事前予告してくれたし、予想以上に大掛かりな電飾のプレートがきたから爆笑しながら迎え入れることができた。ふたりで「すげえ」「すげえ」とか言いながら大学生みたいにはしゃいでケーキの写真をぱしゃぱしゃ撮った。超楽しかった。

 

また美味しいものを食べようね、お泊まりしようねと約束して、改札の中で別れて、大塚愛を聴きながら帰る。思春期に死ぬほど聴いた音楽は今でも耳に馴染んで聴き心地が良い。「フレンジャー」ってわたしたちの歌みたいだと思った。また会おうぜ。

フレンジャー

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  • 大塚 愛
  • J-Pop
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