フープフラフープ

はらの趣味です

夢になってゆくでしょう

 

 

毎日夢をみている。その日会った人とか、明日会う人とか、会いたい人とか、会えない人とか、会ったこともない人とか、いろんな人がわたしの夢に出てくる。そういうときは幸せな夢であることが多くって、気持ちよく眠れるから寝坊しちゃうこともある。夢に出てきたからというだけの理由で、人を好きになったこともある。もう絶対に会えない人と夢の中で会えたから「これは夢だ」と気がついて、その夢がずっと続くように起きないようにと過ごしたこともある。それでも毎朝必ず7:18に目覚ましの音が夢を終わらせる。抵抗して二度寝する。寝坊する。

 

今日の昼休み、明日が祝日だということに気がついた。ならば多少無理をしても明日はゆっくり眠ることができる。映画を観に行こう。なにを観るか散々迷って、大好きな金子大地という俳優が出演している、ずっと観たかった「手」という映画を観ることにした。

 

映画館には仕事帰りのスーツの人がたくさんいた。みんなひとりで来ていた。座った席の隣の隣には、ひとりで来ているきれいな女の人が座っていた。その人が荷物を置いていた席に人が来て、荷物が行き場を失ってしまった。わたしの荷物をずらして一緒に置けるようにしたら、無言で荷物を置きながらぺこぺこお辞儀されたから、わたしも無言でぺこぺこお辞儀をした。もし彼女と友達になれたらきっと楽しいんだろうなぁなんて考えていたら映画が始まった。

 

性欲で成り立つ関係性について考える。性欲にはどうしても愚かしさが伴ってしまう。好きってなんなんだろう。最愛のものを見つめるまなざしで「かわいい」と呟くあの顔を知っている。「すき」と呟く心の中も知っている。そのときは本当だったとしても、それが性欲からくる感情だったとすれば、何を信じたらいいんだろう。30目前にもなってこんな思春期みたいなことで迷子になっていることがもうとても愚かしいし普通にヤバい。さっさと割り切れよな。

 

心の底から信頼している異性の友達がふたりだけいる。そのうちのひとりから(別に一度もいい感じになったりとかはしてないけど)何かの話の折に「あなたとは絶対に寝ない。寝たら終わりのある関係になってしまうから。あなたとはずっと友達でいたいから、寝ない」と言われたことがある。この人と友達になれてよかったと、心の底から思った。

 

そういう性欲を取り払った関係性を持ちたいと思う反面、この映画のさわ子と森の間にあった「友情を経ない恋愛」も羨ましいと素直に思う。そういうのがめっちゃ楽しいの、知ってるから。だけど恋愛には、裏切りとか、嘘とか、消えていく気持ちとか、友情の中には滅多に起こり得ない怖いことがたくさんある。だからこそ生まれうる酔っ払ったような心地よさと高揚感に憧れながら、それでも欲しいと思うことが怖い。もうどうしたらいいかわからん。

 

たくさんの「知ってる」であふれかえる映画をみて、このままじゃ帰れない帰りたくないと思って宮下公園のベンチでしばらくぼうっとしていた。若者たちが喋ったり喋らなかったりしながら身を寄せ合っている。今年のクリスマスは土日だ、嫌すぎると思いながら重い腰をあげる。これだけごちゃごちゃ言っておいて、寂しいからってだけで恋人が欲しいと思う自分の不安定さや危うさに呆れる。階段をゆっくり降りて、かわいいネオンのもんじゃの看板が目に入る。「もんじゃ」の「じゃ」の電気が切れて「もん」になっていた。その上には「まぁ全部、若気の至りってことで。一瞬で青春。Tinder」って書いてある超でかい広告があった。こんなふうに性欲だけを剥き出しにしてくれるなら、わかりやすいし潔くて怖くない。そんなもの欲しいとは思わないけど。まじで好きってなんなんだよ。